2019年度の締めくくりは「桃の節句」を祝ういけばなです。昔の人々はこどもたちの健やかなる成長を願いいけたのでしょうか。もちろん、こどもたちの大いなる育ちを願う気持ちは昔も今も変わりません。
窓の外は雪深く寒々しい札幌ですが、可憐な春の花材を手にすると、ほっこりとした気持ちになります。現在、住宅街のあちらこちらでは、排雪のための大きなトラックが行き来していて道路は混雑していますが、何もしなくてもあとひと月もすれば自然に雪は溶けてなくなることでしょう。気分は、もう春です。
花材①/桃(もも) 菜の花(なのはな) スイートピー
花材②/桃(もも) フリージア スイートピー
花材③/桃(もも) チューリップ レザーファン
「盛花(もりばな)」は、小原流の最も特徴的な表現のひとつとして大切に伝承されてきたいけばな形式です。中でも直立型(ちょくりつけい)は盛花の基本中の基本です。例えば「どんな風にいけようかな?」と、思い悩んだ時には、いつも振り返る拠り所のような存在です。ほとんどのこどもたちにとっては初めての盛花でしたが、楽しくお稽古できたようです。今回は初春をイメージする雪柳と赤芽柳でしたが、これからも季節の花材を用いて繰り返しお稽古していきましょう。
花材①/雪柳(ユキヤナギ) バラ
花材②/赤芽柳(アカメヤナギ) カーネーション ゴッドセフィアナ
クリスマスの時期にお花屋さんで見かける檜葉(ヒバ)は常緑針葉樹です。同じような仲間には、杉(スギ)、檜(ヒノキ)があり、それぞれ独特な芳しい香りがします。日本では昔から家を建てる時に使う建材として重要な樹木です。どうしてかというと、この個性的な香りが防虫、防腐・防湿、抗菌作用があるからのようです。人に対しては、緊張を和らげたり落ち着きをもたらす効果が確認されています。ですから家に飾ってリラクゼーション効果が期待できるかもしれません。
さて、この堂々とした姿と生き生きとした枝の特長を生かして、瓶花のお稽古です。留め木を使い主枝のポジションをしっかりと決めることから始まります。みんな、頑張りました! いけ終えた後には、アレンジメントにいけ替え持ち帰りました。
花材①/ヒバ カーネーション 笹葉ルスカス(金塗り・銀塗り)
花材②/ヒバ カーネーション コチア
補 材/乾燥素材 リボン 木の実 松かさなど
初冬の札幌です。陽気に明るく華やいだ季節が移ろい次第次第に寒さが増すこの時期、お花屋さんの花材の種類も限られてきますので積極的に乾燥素材を用いるなどして作品を楽しみたい季節です。乾燥素材とはどんなものでしょう? そして、どんな特徴があり、どのように扱えばよいのでしょう? また、どんなことができるのでしょう? くるくるとした巻き蔓を面白い形にしたり冷たい北風や薄氷のように表現してみたりと、乾燥素材ならではの面白さを考えてみました。
花材①/晒し巻き蔓 ガーベラ ポリシャス
花材②/晒し巻き蔓 カーネーション ピットスポラム
補 材/晒しほうき草 ラグラス フローレンティナ(麦ナデシコ) スモークツリー<補材は全て乾燥素材です>
今年も東月寒地区センターの文化祭に作品を展示いたしました。
これまでにお稽古した花型を思い出しながら花材と花器に合わせて作品のイメージを作り上げていきました。お稽古では使用したことのない初めて使う花器で戸惑いがあったかもしれませんが、みんなとても良く頑張りました。こうしていっぱい考えて自分の手でいけあげた作品にはそれぞれの思いが込められ、作品に対する愛着も湧いてきたことと思います。ステキでした。作品展の当日は、お天気も良く会場には多くの人々が訪れました。みなさん、お疲れさまでした。
花材の取合せについて、色彩の美しさ、花や枝の姿の変化や出合いの面白さなど、色々な側面から考えると無限の可能性が考えられます。これまでの経験だけにとらわれず、自分で自由に考えるのはとても楽しいことです。珍しい花や高価な花でなくても、心から素敵だなと感じられることはあります。市場で流通する花材も年々変化してきているように感じますので、私も時々は相性が良いと知られているものばかりではなく、色々な取り合わせを試してみたいと思います。みなさんもお庭の花や手に入る花材があった時など、自由に試してみてね。
花材①/ゴッドセフィアナ ガーベラ ワックスフラワー
花材②/ソケイ カーネーション ドラセナ(ドラセナ・ハワイアンフラッグ)
これまでもこども教室を続けている中で、できる限り色々な植物と出会う機会をと工夫を重ね、取り組んできました。様々な制約がある中で、できることは限られていますが、昨年、秋のことです。ふとしたことから「蓮(ハス)はどうだろうか?」という話になりました。こどもたちには難しくないだろうか。楽しくいけてもらえるだろうか? 等々考えて、今年度の計画を立てました。今年の私たちのこども教室の年間を通じてのテーマは、『季節をいける』です。ガーベラやカーネーションなどは一年を通じてほぼいつでも手に入ります。しかし、あえて特にこの季節ならではという花材を何回か入れてみようということに決めました。
ご承知のように、植物の生育はお天気の影響が大きく、教室の開講日にピタリと狙いの植物が手に入るかどうかヒヤリとする場面もありましたが、何とか実行することができました。
はやる気持ちを抑えて、格調高く『蓮の一種いけ』です。蓮の水揚げ方法を教えると、みんな、真剣そのもの。楽しめたでしょうか?
花材/蓮(花① 開き葉②または③ 巻葉①)
透明なプラスチック製容器をガラス器に見立て、そこにストローを詰めることで花留として使用しました。ストローはどんな花にも合うように淡い色彩のものを数種用意しましたので、各自、思い思いにストローの色合いや長さを調節して、まずは舞台装置の出来上がりです。次は、いよいよ役者(花や葉)の登場です。はたして、どの花が主役に抜擢されるのか? 名脇役は誰なのか?
「サァ、みんな、ディレクターになったつもりで演出しましょう!」
花材①/撫子(ナデシコ) アスター キリフキソウ
花材②/撫子(ナデシコ) スカビオサ キリフキソウ キノブラン
花材③/デルフィニウム マリーゴールド ゴッドセフィアナ
ヒマワリと透かし百合は、いかにも夏にお似合いの植物です。前回、ヒマワリを使わなかった人はヒマワリがヒロインです。また、前回ヒマワリか芍薬をいけた上級者には透かし百合を取り合わせました。百合は四方についている蕾や花の向きを見極め、良い表情を引き出すのが難しいのですが、こどもたちに苦手意識は全くないようです。
また、花器もそれぞれの力やお稽古の進み具合に合わせて用意しました。仕上げにトクサを用いることにより、作品にデザイン性と動きをつけられたと思います。なかなか素敵な作品になりました。ところで、N先生はこどもの頃、トクサを折りたたんで床の掃除や床磨きに使ったことがあるそうです。生活の知恵だったのですね。
花材①/向日葵(ヒマワリ)スプレーカーネーション ゴッドセフィアナ かすみ草 砥草(トクサ)
花材②/透かし百合 デルフィニウム キキョウラン または ドラセナ 砥草(トクサ)
花材③/透かし百合 カーネーション 鳴子百合(ナルコユリ) 砥草(トクサ)
花材④/透かし百合 ガーベラ または スナップ ゴッドセフィアナ 砥草(トクサ)
この季節ならでは花材を使ってのお稽古です。とは言っても、何でも手に入るというわけではありませんから少し苦労しましたがお花屋さんの協力で取り合わせることができました。
カンパニュラ(和名は風鈴草)と紅花(べにばな)は、春から夏にかけて咲く花です。ガーベラやスプレーカーネーションと合わせてならぶかたちをお稽古しました。上級者は、芍薬(しゃくやく)または向日葵(ひまわり)を主役に盛花 傾斜型のお稽古です。
花材①/紅花(ベニバナ) スプレーカーネーション 笹葉ルスカス
花材②/ガーベラ カンパニュラ ピットスポルム
花材③/ギョリュウバイ 芍薬(シャクヤク)
花材④/ギョリュウバイ 向日葵(ヒマワリ) ドラセナ
こうしてまた、年を重ねて教室を続けることができる喜びは、とても大きなものです。たった月に一度のお稽古ですが、いけばなを通じて感じられるそれぞれの成長を目の当たりにして、頼もしくもあり嬉しくもありなのです。この人たちがこれからの日本を担っていくのだなとしみじみ感じてしまいます。
と、いうわけで令和の年もみんなで協力しながら頑張っていきましょう!
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